2022年9月2日から3日まで兵庫県立大学で開催された日本調理科学会の2022年度大会で「ドライりんごのおいしさと品質に及ぼすブランチングとUV-A照射の影響」と題する研究発表を行いました。https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/33/0/33_98/_pdf

ポリフェノールやペクチンなどが含まれ機能性の高い果物であるりんごは、乾燥してドライにすれば生食では得られない甘味が生まれ、トッピングとして調理にも使えます。しかし、りんごを乾燥する際に褐変が生じ見栄えと風味が落ちます。褐変はりんごに含まれるポリフェノールが酵素と反応する現象です。

褐変を抑制させるため、乾燥する前に食塩水やアスコルビン酸等の酸化防止剤あるいは

pH調整剤等にりんご片を浸す方法が主に取られています。本研究では酸化酵素の働きを抑えるため、蒸気で加熱処理する(ブランチング)方法を採用し、ブランチング処理した後に乾燥した場合、干しりんごの美味しさと品質がどのように変化するのか影響を検討しました。

青森県十和田市で収穫されたりんご「むつ」を、複数の厚さにスライスし、乾燥温度と乾燥時間を一定にして含水率10%程度まで乾燥を行いました。その結果、ブランチング乾燥物は蒸すことによって切断強度が1.3倍に固くなり弾力性が失われ、官能評価でも味と食感が劣っていると評価されました。これらは、蒸すと果肉が収縮硬化し、エキス分の流出が生じたからと考えられます。

一方UV-A照射の効果について、りんごにはプロシアニジンという健康に良いと注目されるポリフェノールが含まれます。非照射乾燥物と比べて、UV-A照射乾燥りんごの総ポリフェノール含量は1.2倍、抗酸化性の指標であるDPPHラジカル消去活性値は1.36倍増加しました。官能評価では、UUV-A照射乾燥物は、色は劣るが、味は変化なし、香りと食感は優れていると評価されました。

このように、無添加で良いと思われたブランチングよりUV-A照射乾燥の方が香りと食感が優れたドライりんごを製造できることがわかりました。