2021年9月7日から8日まで実践女子大学で開催された日本調理科学会の2021年度大会で「切り干し大根のおいしさと品質に及ぼすUV-A照射の影響」と題する研究発表を行いました。https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/32/0/32_80/_pdf/-char/ja

煮物に干し椎茸が使われますように、干し野菜は乾燥により含水率が減少するので、歯ごたえが良く味が濃縮されるだけでなく、調味液が浸透しやすいので時短調理や減塩調理が可能となり、保存性も上がるので食材のストックも可能となる万能野菜です。一方で干し野菜は機械温風乾燥品より天日干し品が美味しいとも言われています。本研究ではその要因の一つに太陽光の中で波長の短い紫外線が関与していると考え、切り干し大根を材料に紫外線(UV-A)を照射することによるおいしさと品質の変化を検討しました。

八甲田山麓で収穫された大根を、一方はUV-A照射乾燥法で、もう一方は非照射乾燥法により同一条件で乾燥を行いました。表面状態を比較したところ、非照射乾燥物に比べUV-A照射乾燥した切り干し大根の方が白っぽくて明るく、赤みが少なく、黄色みが多かった。また非照射乾燥物に比べて、UV-A照射乾燥物の遊離アミノ酸量は1.67倍、抗酸化性は1.35倍、ポリフェノール含量は1.44倍多く、天日干しもほぼ同様な傾向でありました。

官能評価では、UV-A照射乾燥物の方が水戻し状態で噛み応えがあり、大根の香りと甘味を感じ、調味料で味付けした場合でも味が良くしみ込んで優しい味付けを引き出していると評価されました。t-検定では非照射と比べて、それぞれ1%以下の有意水準で有意差が認められました。切り干し大根を水戻しした水溶液の色および調味液で煮た後の表面色や残液の色の比較からも上述の品質と官能評価結果が定性的に裏付けされました。

したがって、乾燥野菜の乾燥工程にUV-A照射乾燥法を取り入れることにより、栄養価が増加し、調理液の味と良く調和する美味しい乾燥野菜を作ることができるのです。