天日干しの旨さを超えるUV-A照射乾燥法

天日干しの旨さを超えるUV-A照射乾燥法

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天日干しは雨, 風等の天候に左右され, 乾燥品にハエがたかり鳥の糞や異物が混入し不衛生となることがあります。また所定の含水率になるまで乾燥するのに長時間かかり, 空模様を気にしながら屋外に干したり、閉まったりと手間暇かかるという問題もあります。
そこで、当研究所では、UV-Aを人工的に照射することで天日干しの旨さを超える乾燥物を製造できる光照射乾燥法を開発しました1)。また、アミノ酸だけでなく、イノシン酸などの核酸、GABA等の生理活性物質、ポリフェノールなどの抗酸化性物質も光照射で増大することを明らかにしました2)
さらに、UV-A照射技術の新たな展開として、肉の熟成のような発酵現象にも効果があることを提示し3)、その応用例として魚醤油のUV-A照射製造方法を開発しました4)
また光殺菌としてUV-Cが知られていますが、乾燥課程でUV-Aを照射すると、殺菌効果が発現し、ボイル操作を不要にしたノンボイルUV-A照射乾燥法を開発しました5)

  1. 特許:水産物または農産物の光処理方法(特許第3727560号)
  2. 特許:農産物または、水産物または、畜産物の抗酸化性物質含量もしくはGABA含量もしくはカテキン含量もしくはヌクレオチド含量を増大させる方法および装置(特許5707623号)
  3. 熟成した畜肉の製造方法(特開2014-50339)
  4. 魚醤油の製造方法(特許6403512号)
  5. 水産加工品の乾燥殺菌方法(特許6473935号)

UV-A照射乾燥法(UVID®)の特徴

UVID(ユービット)(UltraViolet紫外線 Irradiation照射 Drying乾燥)

写真 乾燥桜エビの表面状態

桜エビを温風乾燥すると、いかにも加工品といったピンク色になってしまうのに対しUV-A照射乾燥は天日干しのように自然な薄いピンク色を再現します。

椎茸の場合はUV-A照射すると表面の色が白っぽくなり見栄えが向上し、独特の風味も増します。生イカはUV-A照射乾燥するとイカ特有の茶褐色が薄くなったスルメが得られます。
切り干し大根の場合は天日干し以上に白っぽくなり、水戻しした状態では、かみ応えがあり、大根の香りと甘みを感じ、調味料で味付けした場合でも、調味液の味が良く染み込んで優しい味付けを引き出していると評価されました。

写真 椎茸の表面状態

2.アミノ酸含量が増加し、おいしさが増す。(特許第3727560号)

前のページで紹介しましたように、イカのような水産物、白菜、大根のような農産物、椎茸のような林産物等、様々な農林水産物をUV-A照射乾燥すると遊離アミノ酸含量が増えることを確認しております。
図2は同一の乾燥温度で乾燥した干し椎茸の遊離アミノ酸総量に及ぼす各種波長の影響を示したグラフです。波長が短くなるにつれて遊離アミノ酸含量が増加し、UV-Aでは1.8倍増加し
ました。

3.アミノ酸だけでなく、グアニル酸、イノシン酸などの核酸、GABA等の生理活性物質、ポリフェノールなどの抗酸化性物質も増大する。(特許5707623号)

UV-A照射は酵素活性を高める効果がありますので、野菜、果物、椎茸等をUV-A照射乾燥するとアミノ酸だけでなく、青背の魚等に含まれるイノシン酸、椎茸等に含まれるグアニル酸などの核酸、籾に含まれるGABA等の生理活性物質、果物に含まれるポリフェノール等の抗酸化性物質も1.4~2.0倍増大します。青照射の場合も同様です。

旨み成分のグアニル酸(核酸)が温風乾燥に比べて1.4倍増加しました。(青背の魚に含まれるイノシン酸も同様に増大します。)

Trolox相当量が大きいということは、抗酸化力が強いことを示します。抗酸化力はUV-A照射より青照射が増加します。

図6は青森県産「まっしぐら」の籾を乾燥させ、胚芽に含まれる生理活性物質GABA含有量を測定し各種波長の影響を示したものです。青照射乾燥とUV-A照射乾燥の場合、光を照射しない温風乾燥に比べて約1.4倍増加しています。茶葉にUV-A照射しても、4種類のカテキン(エビガロカテキンガレード、エビカテキンガレード等)含有量は1.3倍増加しました。

4.鮮度:鮮度が良いほどUV-A照射効果は増大する。

酵素活性は鮮度が良いほど高いので、鮮度が良い程UV-A照射効果が大きく表れ、冷凍品に比べ生鮮品の方がアミノ酸量増大効果が大きく、同じイカを天日干しした乾燥物よりもアミノ酸含量は増大します。このように地域の農水産物を収穫後すぐにUV-A照射することにより、うま味と健康成分が増大した乾燥物(産地乾燥品)が得られます。

5.温度:低温下でもUV-A照射効果は持続する

酵素活性は低温だと活性が低下しUV-A照射効果は表れないと思われる。しかし図7に示すように、5℃の低温下の場合でも遊離アミノ酸量が1.5倍増加しています。ただ、1週間冷凍した冷凍イカは増加率は若干少なくなります。

6.殺菌作用で鮮度保持に効果的(特許第6473935号)

UV-AにはUV-C程強力ではないですが、殺菌効果もあり、一般生菌数が大幅に減少し、保存性が増大します。UV-A照射は鮮度保持には効果的であり、保存性が増し、日持ちも向上します。

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