天日干しの旨さを超えるUV-A照射乾燥法
天日干し
天日干しすると、なぜ美味しくなるの?

イカの天日干し風景(北海道・松前町)

切り干し大根(愛知県・渥美半島)
スルメは、生イカを太陽の光が燦々と射し、潮風が吹く海に面した南向きの高台に4日間干します。切り干し大根は、大根を初冬~3月までの北風が吹く北西に面して2~3日間天日で干します。
機械乾燥品より天日干しの方が美味しいとされる理由について、
① 外気が乾燥に適した温度・湿度条件になっている。
② ゆっくり乾燥するため味が熟成される。
などの諸説がありました。
天日干しの方が美味しいのは、太陽が燦々と当たっているので、太陽の光が関与しているのでは?と考え、イカ、白菜および切り干し大根の天日干し実験を通して、太陽の光が関与していることを明らかにしました。

生イカの天日干し実験(1日目)(北海道・松前町)

(2日目)
生イカを一日目6時間、2日目6時間の2日間天日干しした場合のするめの遊離アミノ酸総量[mg/100g乾物]と天日干し時間との関係、および2点比較法で行った官能評価と遊離アミノ酸総量との関係を示します。


天日干し時間が長いするめほど、遊離アミノ酸総量が多く、遊離アミノ酸総量が多いするめは官能評価も良いという傾向が見られました。

白菜の天日干し実験(八戸工大)

図1 天日干しによる白菜のアミノ酸総量の変化
快晴の日の正午前後の時間帯を選び、大学構内の芝生の上で白菜の天日干し実験を行いました。乾燥による水分減少による濃縮の影響をなくすために、100g乾物(カラカラに乾燥)当たりの16種類の遊離アミノ酸総量[mg/100g乾物]で示しました。3時間天日干しすると、白菜のアミノ酸総量は1.8倍に増加しました。

図2 切り干し大根の遊離アミノ酸含量変化

図3 切り干し大根の抗酸化性の変化
同一品種の大根を一方は2日間天日干しを行い、もう一方は天日干しの外気温と同じ乾燥温度の条件下で、光を照射しない非照射通風乾燥とUV-A照射乾燥の2種類、計3種類の切り干し大根を製造し、乾物当たりの遊離アミノ酸総量と抗酸化力の変化を測定しました。抗酸化力すなわちラジカル消去活性をトロロックス相当量として表しています。Trolox相当量が大きいということは、抗酸化力が強いことを示します。
天日干し切り干し大根のアミノ酸総量は光を照射しない非照射干し大根と比べて1.5倍増加しました。また、大根にはポリフェノール等の抗酸化性物質が多く含まれています。抗酸化性物質がかもし出す抗酸化力は1.37倍増加しました。このように、天日干しすることによって、美味しく栄養価の高い切り干し大根が得られることがわかりました。
(現代農業2016.9)
太陽光のどの波長の光が関与しているの?
太陽光に含まれる6種類の波長の光を人工的に照射する光照射乾燥装置を作成し、さまざまな農水産物を対象とした乾燥実験を行い、太陽光の中で特にUV-Aの紫外線が関与していることを明らかにしました。

図 イカの平均アミノ酸増加率に及ぼす光の影響
増加率100%(比率1.0)は乾燥イカのアミノ酸量が生イカのアミノ酸量と同量であることを示します。アミノ酸増加倍率は、波長の一番長い赤から順に波長が短くなるにつれて増加倍率が大きくなり、UV-Aの場合が最大値を示しました。太陽光線の中で波長の短い紫外線UV-Aに遊離アミノ酸を増やす効果があることを示しています。
さまざまな農水産物について収穫時期を変えた同様な実験を行っても、UV-Aが増加率トップの傾向に変化がありませんでした。このように、天日干しが美味しいのは、太陽光線の中でブルーライト、UV-Aのような波長の短い光が関与していることを明らかにしました。