天日干しの旨さを超えるUV-A照射乾燥法

低温貯蔵法と切り干し大根

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野菜の鮮度を保ち、健康成分が増大する光照射低温貯蔵法

収穫後の野菜は一般的に室温で貯蔵中されますが、野菜の生理活性が継続しているため、日数が経過するにしたがって栄養価が低下し、品質が劣化してしまう問題があります。鮮度保持の方法には温度や湿度を調整するCA貯蔵が知られていますが、農水産物の乾燥工程だけでなく、低温貯蔵時にもUV-A や短波長の可視光を人工的に照射することにより、鮮度が保持され、抗酸化力が増大することを明らかにしました。

光照射低温貯蔵法の特徴(ほうれん草の貯蔵実験)

1.鮮度が保たれる

写真1 5℃で24時間光照射後の表面状態  
上段左からUV-A照射、青色照射、下段左から緑照射、赤照射、非照射

光合成系の青、赤照射の場合は葉が若干しおれますが、UV-A照射・緑照射の場合は葉の縮れが少なく、良好であります。

図1 クロロフィル含量変化に及ぼす各種波長の光の影響

2.葉の緑色が保たれる

写真では葉の緑色には変化がないようですが、葉の緑色を保つクロロフィル含量は非照射に比べて若干高めにキープされています。

3.健康成分(L-アスコルビン酸)、抗酸化力が増大する

図2 Lアスコルビン酸含量変化に及ぼす光の影響 (左図 1日目、右図2日目)

ほうれん草のアスコルビン酸(ビタミC)含量は非照射、光照射ともに2日目になると1日目に比べて約70%も減少しました。しかし光照射の場合アスコルビン酸含量の低下を抑え、非照射に比べて1.6~2.4倍多く保持されています。

図3 抗酸化力(Trolox相当量)に及ぼす光の影響(左図1日目、右図2日目)

Trolox相当量が大きいということは抗酸化力が高い事を意味します。2日目になると抗酸化力は低下しますが、青照射・緑照射の場合、非照射の1.4~1.7倍多く保たれています。
このように、出荷後の野菜の貯蔵時に、中間波長の可視光(緑~青)の光照射することで品質を保ったまま、栄養価の高い野菜を流通させることが可能になります。

干し野菜と干しりんごの試作

UV-Aを照射する光照射乾燥法で干し野菜と干しりんごを作りました。
干し野菜として切り干し大根、及び干しりんごを例にとり、UV-A照射乾燥品の特徴を紹介します。

① 切り干し大根

千切り切り干し大根の表面状況を比較して示します。

写真2 切り干し大根の表面状態

色彩色度値(a, b, L)から、UV-A照射乾燥の方が白っぽくて明るく、赤みが少なく黄色みが多くなりました。非照射に対する色差ΔEは11.4と高く、肉眼で容易に違いが識別できる値です。

切り干し大根の品質について、総ポリフェノール含量の変化を図4に示します。
総ポリフェノール含量を没食子酸に換算して表しています。
非照射干し大根と比べて、UV-A照射干し大根のポリフェノール含量は1.44倍増加し、天日干しとほぼ同様な傾向でありました。1ページに記載したように、遊離アミノ酸量は1.67倍、抗酸化力は1.35倍増加しました。

図4 総ポリフェノール含量変化

官能評価を行ったところ、UV-A照射干し大根の方が水戻しした状態では、かみ応えがあり、大根の香りと甘みを感じ、調味料で味付けした場合でも、調味液の味が良く染み込んで優しい味付けを引き出していると評価されました。

② 干しりんご

りんごにはプロシアニジンが主体のポリフェノールが含まれています。非照射干しりんごと比べて、UV-A照射干しりんごの総ポリフェノール含量は1.2倍、抗酸化力は1.36倍増加しました。

図5総ポリフェノール含量の変化

図6 抗酸化力(DPPHラジカル消去活性)の変化

図7 官能評価 (非照射干しりんごとUV-A照射干しりんごの比較)

東京ビックサイトでの来場者40名(男性40名、20代~70代)を対象とした官能評価では、UV-A照射干しりんごの方が色は劣るが、味は変わらず、香りと食感は優れていると評価されました。

このようにUV-Aを照射して乾燥することで、抗酸化力がアップし、香りと食感が優れた干しりんごが得られました。

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