ボイル魚介乾燥品は保存性が良いが、旨み成分が流出し、生鮮品のような美味しさに欠けるという課題がありました。そこで、天日干しの技術を応用したUV-A照射乾燥法によってボイルせずに旨みを閉じ込め、生鮮品のような風味を保ち、かつ保存性も増大するノンボイルUV-A照射乾燥法を開発しました。(特許6473935号)

ノンボイルUV-A照射乾燥物の特徴
松島湾の牡蠣を対象に、ノンボイルUV-A照射乾燥法で乾燥したUV-A牡蠣の特徴を説明します。
1)表面の性状
蒸し牡蠣はボイルするので色落ちしていますが、ボイルしないUV-A牡蠣はUV-A照射によりアメ色に変化しています。天日干しほど色は濃くありません。

写真 牡蠣の表面状態
2)美味しさ(アミノ酸量、グリコーゲン量)


UV-A照射乾燥すると非照射乾燥に比べて、アミノ酸総量は天日干しを超え最大1.7倍増加し、グリコーゲン量は1.27倍に増加しました。
3)保存性・殺菌効果
生牡蠣を非照射、UV-A照射の二通りの方法で6時間乾燥した牡蠣を10℃で20日間保管し、標準寒天培地法で測定した一般生菌数を示します。
UV-Aに殺菌効果がありますので、一般生菌数は1/55 に減少しました。
UV-A照射すると一般生菌数が減少し、保存性が増大するということは、椎茸、切り干し大根等でも実証しております。

4)官能評価
非照射乾燥牡蠣を基準にUV-A照射乾燥牡蠣の官能評価を7段階採点法で行ったところ、
・基準物と比べて、かめばかむほど旨みを感じる。
・牡蠣の味が強く出ている、牡蠣フライのような生牡蠣を食べている感じがする。
・お酒のおつまみとしてふさわしい
・色は日焼けしたように濃く出ているので、やや好ましくない
・市販品の蒸し牡蠣より格段に美味しい
という評価でした。
オリーブオイルでにんにくとトマトと一緒にソテーしたオイスター調理牡蠣の場合でも
・牡蠣の味がにんにくの香りとトマトの旨みにマッチして地中海料理としてふさわしい
・市販品の蒸し牡蠣より牡蠣本来の味がして美味しい
・基準物に比べて調味液にマッチしていて味も濃い
という評価でした。
適用可能な対象品とそのメリット
乾燥前にボイルする魚介類→ノンボイルUV-A乾燥法で旨み増大
例えば、ほたて、かき、あわびなどの貝類、ホヤなどの脊椎動物、いか、たこなどの頭足類、えび、かに、おきあみなどの甲殻類、なまこなどの棘皮動物、、わかめ、昆布、ひじき、まつもなどの海藻類、
日干しを行っていた魚類、海苔、かつお節→UV-A照射乾燥法で風味増大
あじ、いわし、かつお、こまいはたはたなどの魚類、海苔、
畜肉を早期に熟成させて美味しくする光処理技術 (特開2014-50339)
と殺後の畜肉は、一定期間を低温の環境下で菌の増殖を防ぎながら保管し、畜肉の肉組織を柔らかくし、さらに蛋白質をアミノ酸へ分解し、呈味や風味を増加する熟成工程をとることが知られています。その熟成期間は、牛肉の場合は最低でも2週間以上、豚肉でも1~2週間要します。
畜肉の熟成工程において、畜肉が置かれた環境温度を低温に制御しながら光照射を行うことで、肉組織が柔らかく、呈味が増加するという熟成効果を早期に発現させることができました。
実験
と殺後の豚ロースカット品を2℃の冷蔵庫内でUV-A照射と青照射の二通りで3日、6日、9日間照射しました。
結果
17種類のアミノ酸含量変化を図4に示します。豚肉に含まれる17種類の遊離アミノ酸総量は、非照射の同一日数経過品に比べ、UV-A照射の場合1.07~1.16倍、青照射では1.07~1.10倍に増加しました。
次に食味に関与する旨味成分に絞り、グルタミン酸含量(Glu)とグルタミン酸と核酸系のイノシン酸(IMP)およびグアニル酸(GMP)との旨味に関する相乗効果を考慮した旨味量を計算し、非照射3日目の旨味量を基準力価1.0とした場合の呈味力価を図5に示します。UV-A照射の場合1.10~1.16倍、青照射では1.09~1.14倍に増加し、遊離アミノ酸総量だけでなく旨味に関与する旨味量も増えていることがわかりました。

図4 17種類の遊離アミノ酸含量変化

図5 非照射3日の旨味量(Glu+IMP+GMP)を1.0とした力価
官能評価
豚肉の食味には旨味だけでなく、食感(テクスチャー)に関係する肉質の柔らかさが関与します。非照射3日目を基準として整理した官能評価を表に示します。旨み、柔らかさについて、強く感じるを+++、感じるを++、わずかに感じるを+とします。
非照射サンプルに比べ、UV-Aおよび青照射区は、旨味が強く感じられ、肉質もさらに柔らかく感じる傾向が確認されました。

表 豚肉の官能評価結果
想定される用途
光照射は、肉組織が柔らかくなり、呈味が増加するという熟成効果を早期に発現させることができます。
想定される畜肉:豚肉、牛肉、鶏肉等の非加熱の肉、
部位:肩肉、もも肉など、どの部分でもよい。
形状:枝肉状、カットしたブロック状、スライス状、ミンチ状など、どの形状でもよい。
照射処理する雰囲気温度:低温、約-5~10℃、より好ましくは約-2~5℃
想定される装置:ショーケース、冷蔵保管庫